2010年05月14日

「待ち合わせ」



何年前だっただろうか、
東急東横線の「洗足駅」で財布を落としたことがあり、
運良くとても良い方に拾われた。
良い方というのは、
80を少し超えている感じの、優しそうなおばあちゃま。
クリーニング店の引換券から辿って電話を下さり、
飛び上がるほど嬉しかったあの時の事は、今でも忘れられない。

電話を切った後、すぐに待ち合わせ場所へ向かった。
「あの年代の方だ。間違いなく時間より早く来られるだろう」
予測した私は時間よりも15分早く行ってみた。
すると案の定。
おばあちゃんは、改札を出てすぐに見つけられるようにと思われたのか、
じっと改札口を見つめたまま目立っておられた。
「流石!かなわない…」
本当に頭が下がる思いだった。

ところが、
場所も相手も変わって神宮外苑。

打ち合わせのためデザイナーとオープンカフェで待ち合わせ。
平均して彼は毎回、30〜40分は遅れてくる。
それに慣れてきたこの頃は、
予めその時間を見越して、その間に出来ることを抱えて行くようになった。

ちらりと嫌味を言っても通じず^^;
遅れて来たにも拘らず、
「いちょう並木の下で本を読んでいるゆ〇子さん、絵になってたなぁ」
などとおべんちゃらを言いながら、
しなやかに伸びた綺麗な人差し指と親指で四角をつくり、
四角の中に私を入れて片目をつむる。
(なんでもえーから早う座らんかい!ワレ(--メ))心で叫び、
思わずとび蹴りを入れそうになった(笑)
更に、長身をくねらせながら格好良く座ったかと思うと、
今度はワインを注文しながら店員との薀蓄がはじまる。
「あの、私も次があるから……(えーかげんにせーよちっ(怒った顔)!)」
テーブルをひっくり返しそうになる(笑2)

だがここは年上の私のプライドがセーブする。
(穏やかに穏やかに…^^;)
「じゃあ、はじめようか」
感情を抑えて冷たくも聞こえるような言い方で、
いつものように打ち合わせがはじまる。

「待ち合わせ」
おばあちゃんの真似を、
きっと毎回は出来ないだろうけれど、
おばあちゃんの中に流れている時計と、
人を待っています、人を探しています。
という真剣な眼差し。

いいなぁ…と思い、尊敬しつつ、
苛っとしながら今日もデザイナーを待つ^^;


posted by 悠(ゆう) at 22:38| Comment(13) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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